ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステミックカウンセラーのブログです

支援者はつらいよ… (ため息なこの夏)

こんばんは。お変わりありませんか?ノルウェーが先月、コロナ収束宣言したかと思ったら、あれよあれよという間に日本でも新規感染者数が下がり続けていますね。「もしや、これは!」収束宣言まで行かないまでも、さまざまな対策が大幅に緩和・撤去される兆しかもしれません…(と、最近帰国して隔離14日間を体験した私は期待するのでした。)だったら良いのですがね。だって、他の国々は『ウィズ・コロナ』になっていますからね。

今日はというと、ものすごく久しぶりに私の本業からのトピックです。守秘義務のためにいつも具体的にご紹介することはできないのですが、今日は私の立場からの独り言…「支援者はつらいよ」というところをシェアさせていただきたいと思います。本業については、約2年前のブログでこう書いています。

私の本業、Ungbo (うんぐぼー) - ハンブルネスのひとりごと

 

「訳アリ若い子」を支援する難しさ

人の支援にあたる職業を選ぶと、おのずと対象の方々は何か事情があって支援を必要とされる方々です。それは頭ではわかっていても、時々クライアントさんと上手くいかない時があります。そんな時、どう対処するかはいろいろですが、どう対処するかも悩むところです。

以前紹介したとおり、私の受け持つクライアントさんたちはほとんどが成人(ノルウェーは18歳)していて、これから自立した大人として第一歩を踏み出すべく、住宅を借りて初めて一人で住む…という子たちです。フォローアップの要請はクライアントさんが属している区の担当者から来ます。住居を借りる期間は3年。それは、「住宅賃貸法」(Husleieloven)という法で通常3年というのが決まっているからです。いつも申請者が順番を待っているので、延長はほとんどなく、それぞれが『3年』という与えられた期間と私たちのフォローアップを利用して、3年後には経済的にも実際の居住スキルでも自立していることを目指します。

夏のある日、2019年からずっと受け持っているクライアントさんから電話が入りました。いろいろなことをオープンに話してくれる子だったので、私自身も「気心が知れている」と感じていました。彼女は子供のころから児童保護事務所下に置かれていた人で 犯罪を犯したり、児童保護事務所の担当者とトラブルがあったり、自分が犯罪被害に遭ったり、何かいつも「ハプニング」が周りに起こる子です。今回も彼女の身の危険があると判断できる状況でした。そこで、私はノルウェーの各自治体にある、いわゆる「駆け込み寺」のKrisesenterに保護してもらうことを提案しました。ところが、それを聞いた彼女は突然 切れに切れて、どなって、ものすごい暴言を吐いてきたのです。そして、脅迫ともとれる事も言ってきました。とにかく、話を続ける状況ではないので、一度電話を切り メッセージ(sms)に切り替えました。そこでは、Krisesenterを出すなんて、とんでもない…という内容や、私では話にならないので、ボスと話したい…という内容も。

そこで、ボスに電話で相談し、ボスの番号を彼女に送ることにしました。その後、職場では緊急会議となり、とりあえず脅迫を受けた私は対応から外してもらうことになりました。結局、彼女からボスに電話がかかってくることはなく、対応を代わってもらった同僚も連絡を取り 新しいアポもあげたのですが、その子が来ることはありませんでした。

 

このケースのその後の対応

さて、支援者である私たちが言葉による暴力に遭った時、事例を報告することが推奨されています。労働者の権利がいろいろ守られているノルウェーですから、万が一ある事例がきっかけにメンタルがダウンして休職、また職場復帰できないという事態になった際に「労災」扱いになるか・ならないか…なども報告書があるか・ないかが決め手になったりするそうなのです。

私もその日のうちにこの事例を報告しました。このクライアントさんは精神的にもアグレッション・コントロールができず、急に怒り出して怒鳴り散らす…という事例も以前にもあったのですが、今回は最後に彼女が吐いた私個人に向けた脅迫ともとれる言葉で、直感的に「もう、この子の担当はできない」と思ったのです。ちなみに、このように事例報告するとボスも何もしないわけにはいかず、どう事後処理したか 報告する義務が生じます。今回の対応は、私を担当から外して、同僚を急遽 充てるという事でした。そして、ここがポイントなのですが、脅迫や言葉による暴力は自分が暴力だと受け取ったら、自分の判断で報告することができることです。他からみると全くたいしたことはない、と感じられても、個人の主観的な体験のみが該当するのです。総合福祉事務所(NAV)時代には経済的な支援をする・しないの決定をするため、言葉による暴力はかなり多かったのを覚えています。そのためか、長期休職する同僚も一人や二人ではなく居ました。支援の仕事はノルウェーでもやはり女性が大半を占めています。そして、多くの職員の方々が暴言などを受けつつも 報告を控えているのが実情です。

チーム・ミーティングでもこの事例について話あわれました。チーム歴がもっと長い同僚は、「このクライアントさんが自分の言動に対して何も影響を受けずに 支援を受け続けるのはちょっとおかしいのでは?」という疑問を投げかけてきました。そうですよね、一般社会で自立して生きていくための3年間を私たちがフォローアップするのに、脅迫や暴言をしておいて、何もなかったかのように支援を受け続けるのも 彼女が何も学ばないのではないか…という視点からはうなずけます。NAVの場合は、一定期間そのオフィスに出入り禁止というリアクションでしたが…。ただ、私たちのオフィスがこの子の支援を切ってしまったら、他に支援を受けられるところはどこにもないだろう…という、倫理上の点から 同僚によるフォローアップが続きました。

 

この業界で生き残るために 覚えておくことは…

このエピソードで、もちろん私の対応にも反省すべき点がゼロだったか、といえばそれも違うと思います。とにかく、彼女の話を最後まで聞いてあげるべきだったと思います。ただ、状況がひっ迫していると判断した私は、解決策(安全確保)を先に持って行ってしまったのですね。同僚にいわせたら、「自分だってそうしていた」というのですが。いつも何かが上手くいかない場合はいろいろな立場から検証する必要があるでしょう。特に、何をどう言ったりしたりしたか(英語のDoですね)は今後のためにも検証すべきでしょう。

私のチームは精神疾患やメンタルな健康が安定していない クライアントさんのフォローアップですので、クライアントさんと自分のいわゆる「相性」もかなり気を使います。この夏は3月から担当していた他のクライアントさんからも、「相性が合わないから、他の人と担当を代わってほしい」という申し出があり。私自身も、この彼女はとても難しいと感じていたので、そう言ってくれて良かったな、と思いました。ただ、担当を代わってほしいと言われると、人間の感情としては ちょっと寂しい・がっかり、という感情が出てきても 不思議ではありませんよね。こんなとき、「自分は足りないんだ」とか、あまり自分の性格や能力(英語のBe)についてネガティブにとらえないようにすることが大切だと思っています。そんなときは、居住期間が終わって 「ありがとう、あなたが担当で良かった」と、言ってくれた子たちの顔を思い浮かべながら、「そうそう、こんなこともあるさ」と、自分に言い聞かせたり、同僚と話したり…というのがこの支援者の仕事で定年まで生き残る秘訣ではないかと感じています。

 

まとめ

さて、今日はこの夏に実際にあったエピソードを中心に 支援する者の仕事の難しさなどを綴ってみました。どんなお仕事にもさまざまな課題やジレンマはつきものですよね。私もこちらに勤めて3年経ちますが、まだまだこういった支援の方法やクライアントさんとの人間関係の構築など、学ぶことが多いなと感じます。

 

日本のさらなるコロナ収束を祈りつつ。今日もここまでお読みくださり、ありがとうございました!