ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

オープンバイトとTMD(顎関節症)ー ノルウェー事情

こんばんは。ご無沙汰しています。みなさまお変わりありませんか?

まず、いつも書いていますがコロナ禍のノルウェーのアップデート。はい、こちらも来週の月曜日より半分ロックダウンに近い状態となり、トレーニングセンターなどが首都オスロを中心に閉まります。あとはお店やカフェに入るときのマスクが義務付けられました。公共交通機関も同じです。ただ、イギリスやフランスの比ではないので 助かってはおりますが。

前回ブログでは「ノルウェーの歯科事情」というテーマで私の体験も含め書いてみました。今回は春以降に突然起こった顎の不調*1や今現在などを中心に綴ってみたいと思います。あまり他のブログでは顎関節症の治療を受けた方を見なかったので、もしかしてシェアすることで意味のある独り言になるかしら…と、思いつつ。顎関節症TMDとも呼ばれています。詳しくは以下リンクでご参照ください。

kokuhoken.net


歯科治療後に感じた奥歯の異変

子供の時の矯正治療で下2本が欠如しているため、下は右も左も親知らずがまっすぐ生えています。その右側に大きな虫歯を発見されたのが、3月。「抜け抜け」*2 という歯医者を何とか説得。無事にこの歯の一命はとりとめたのですが…。虫歯は歯の側面にあったものの、欠けた部分や歯の咬合面をレジンでしっかり補強するため、5月中旬に再治療。ただ、3月の時もそうだったのですが、やたらに知覚過敏があって右では噛めないので左でばかり噛んでいました。

異常に気が付いたのが5月下旬。なんだかしゃべるときに左の奥歯がカチカチあたるのです。早速、ネット検索でいろいろ読んでみたのですが「歯の治療でかみ合わせが変化することがある」くらいしかわかりませんでした。それと共に、ここ数年たまに感じていた顎の筋肉のこわばりも頻繁に出てくるようになりました。顎がかたくなって、よく動かない感じです。しゃべる時に「サ行」が特に発音しにくくなってきたり、舌足らずな発音になってしまいました。

この頃、歯科医より新しいスプリント(治療用マウスピース)を作らないかと、声がかかりました。彼も咬筋の緊張のことはずっと言っていて、それを緩和するのにスウェーデンで開発された「Shore Plate」が効果があるというのです。このスプリントは一般にスタビライザー型スプリントと呼ばれていて、上あごだけですが、はめると全部の歯が上下に均等にあたるようになっていて、奥歯だけ当たる場合におこる顎の負担を軽減する効果があります。このスプリント、作ったのはいいものの、どうも歯科技工士のミスで奥歯側の厚みが足りなかったらしいのです。そして前歯部分がやたらに分厚くなるという、あまり付け心地が良いものではありませんでした。この時の歯科医の見解は、私の咬筋の緊張がひどいのはかみ合わせからくる、と思っていたようです。そこでかみ合わせの専門医に紹介状を書いてもらいました。

 

開咬に初めて気が付く

ショア・プレートが効くものだと信じて辛抱すること数か月。その間、スプリントを調整すること数回。紹介状を書いてもらった先はオスロ大学の歯学部で、ここも他の専門医の例にもれず数か月待ちです。

歯科医での最後の調整が10月初めだったのですが、その時にはまた再三、親知らずを抜くように勧められました。理由は、私のかみ合わせがオープンバイト*3で、顎症状(TMD)の原因になっている…からでした。「もっとかみ合わせが正常ならこうは勧めませんよ。」とのこと。

がっくりしながら 帰宅。自分の口を鏡で見ているうちに、「おい、待てよ。もしかして 前はぜんぜん違ったんじゃない?」と、はっとしました。急いで昔の写真を探してみると。本当に昔はきちんと上下の前歯が噛んでいるではないですか!これって、一体どうしたんだろう???と、クエスチョンが浮かぶなか、歯科医に「証拠写真」を送りました。と、同時になんで今まで気が付かなかったのか、かなりへこみました。写真を見る限り、どうも春ころまでは上下はかろうじてかぶさっていたようです。そして、急に開咬になった原因はなんだろう、と検索しまくりましたが どうも理由はよくわかっていないようです。この時点ではこの歯科医は完全に「お手上げ」という態度でした。「こんなに急に開咬になる事例は教科書でも見たことがない」と。

 

大学病院の口腔外科で

顎のこわばり以外には夏ころに顎関節付近の痛みがあり、それをかかりつけ医に相談したところ、検査(MR)に回してくれました。待つこと1か月。MRの所見では異常らしいものはない、とのことでしたが、私の希望で口腔外科への紹介状を書いてもらいました。口腔外科は国立の(大学)病院内にあり、こちらは割とはやく(と言っても3週間ほど)で、検査予約のお知らせが来ました。前回ブログ後の10月末です。

さて、ここではパノラマレントゲン(全部の歯と顎の一部)とデンタルCTを取りました。触診などもありましたが、このCTからもらった診断は「下顎頭の平坦化」でした。こちらではSlitasjegikt、日本語では「関節炎」となります。通常とがっている下顎頭が何かの理由で吸収されて平坦になり、そのため顎が回転して開咬になったとの診断。ただ、炎症自体は今は見えないということでした。「ああ、加齢にともなってよくあることですね。」そして、「今は手術にはならないので、うちでできることはないです。あとは筋肉の緊張があるので、理学療法士に行ってください。」

「え、何もしないんですか?」と、私は愕然となりした。どうも、大学病院の口腔外科では外科処置以外の治療はしてないという意味らしいです。「え、それじゃ、オープンバイトもこのままですか…」「とにかく、がっかりされたとは思いますが、うちでは何もできません。」

 

結局のところ、TMDの知識も経験もないだけの話?

カイロでもショアプレイトでもだめだったから、大学病院まで来たのに。あっさり帰され、「なんてこったい」と、思ったものの、実のところ日本の大学病院の口腔外科のような治療をしてくれるとは 初めから期待してませんでした。

この後、なんとかならないか…と、ネットで情報を集めてはいろいろな機関に電話する日々。まず、読んだのが同じTMDで苦しまれた方のレポート。

www.nrk.no

あまりにもノルウェー医学会でのTMD知識が低すぎる、と訴えたこの方のおかげで研究グループが国によって立ち上げられたり、国の治療指針もまとめられたのはいいのですが、このグループも暫定的で期限が来て解散となりました。

私が電話などでコンタクトを取った機関とは:

Det odentologiske fakultetet (オスロ大学歯学部)、Tannlegeforeningen(ノルウェー歯科医師会)、Tannhelsetjenestens kompetansesenter i Øst (歯科ヘルス学術センター)& Pasientombud i Olso og Viken(患者が病院の治療やサービスについて相談できる機関)... 

そして、紹介状が送られたはずのオスロ大学歯学部では「あなたは登録されていない」との返事。コロナ禍でかなりぐちゃぐちゃになって、紹介状が受領されていなかったようです。勧められて、ここの先生が勤務しているというクリニックに問い合わせたり、他にも「TMD治療しています」という歯科クリニックを調べまくりました。

問い合わせた各機関の答えをまとめると、TMDの専門(歯科)医は「ノルウェーにはまだ居ない」こと、民間の歯科医がスプリント療法などは各自でやっているけど、病院での顎関節症の専門外来などもない、ということ。結局、病院の口腔外科で「何もできない」と言われたのも、もしかして手術以外のスプリント療法などが確立していないから?と、言うことかもしれません。

日本では素人の私が調べた限り、様々な治療法が10年以上前から行われているようです。自分の症状に近いもので見つけた治療法がこちら。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gakukansetsu/21/1/21_1_1/_pdf/-char/ja

 

福祉国家の落とし穴?

顎の領域は歯科領域というのも、痛いところです。と、いうのも前回ブログでお伝えした通り歯科医での治療は通常 全額自己負担だからです。もちろん、TMDのような顎関節の疾患などの場合は少しは国のシステムがカバーしてくれるのですが…。例えば病院で治療できたとしたら、一定の年内に収める自己負担金(2万5千円くらい)を払い終わると、その後の治療などは無料となります*4 歯科の場合は歯科医がそれぞれ値段などを設定していることもあり、上限はなく、しかも払った金額がすべてフリーカード2に計上されるわけではないので、かなりの額が自己負担になることも覚悟です。関節炎でも、膝だと病院で治療してもらえますが、顎は対象外という…。なんとも理にかなわない仕組みです。

先述のTMD専門カイロプラクターは国との提携がない全くのプライベートだったので、(日本の保険証が効かない施術師さんと同じです)去年はかなりの出費となりました。それであまり効いてる感じがなかったので、今回は新しく国のシステム下にある理学療法士を新たに探したので、来週行ってきます。こちらだと、支払った代金はフリーカード2の方に計上され、約2万円ちょっと支払うと年内は無料になります。

 

さて、これからどうしようかと考えていますが、まずは数か月続いている咬筋緊張の緩和からやってみます。(ちなみに、YouTubeで「顎関節症」と検索するとたくさんのセルフケア・マッサージのビデオにヒットします。それも試しつつ)そして、先ほどリンクに挙げた治療法で開咬に関する治療をしてくれる歯科医を探します。本当は全文英語の記事が手に入ればいいのですが。おそらく、こういった開咬はこちらでは正規の矯正になり、こういった治療はされていないと思います。私は歯並び自体は悪くないので、矯正は希望せず、顎の位置を元に戻したいだけです。この日本からの治療法で もし試してくれる歯科医がいて、成功しようものなら かなり嬉しいところですが…。最終的に誰も何もできない時は日本への一時帰国も考えます。

このトピックはまたアップデートしたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

*1:顎が固まったり、食いしばりや筋スパズムなどの問題は数年まえよりあり、去年からTMDを専門に治療するカイロプラクターにお世話になっていました。が、あまりこれといった効果はなし。

*2:日本でも親知らずは生えていても良いことがないから抜け、という歯科医が多いようですが、私は自分の歯はできるだけ抜きたくない方です。この歯も虫歯がしばらく日本の歯科検診で見落とされているようでした。

*3:開咬、前歯の上下の間に隙間ができている状態で、奥歯のみがかみ合っている

*4:病院やかかりつけ医にかけた費用はFrikort、フリーカード1の枠内に計上されます。歯科疾患治療での自己負担金、理学療法士での自己負担金はフリーカード2というまた違う枠内に計上。