ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

ソケイヘルニア 日帰り手術  IN  オスロ 3 ― 手術後の経過

こんばんは!

ソケイヘルニア・トピックも今回で最終回です。今日で手術から11日が経ちました。もう合併症の心配もなくなり、毎日病院からの言いつけを守って生活しています。仕事には来週から復帰ですが、フル復帰はもうちょっと先になりそうです。

さて、前回は手術日当日の様子を書きました。今日は実際の手術法・病院からのお達し・ノルウェーでの病気休職システムについて触れたいと思います。

 

今回の手術―TEP法

前述のLegejournal(レーゲショナール、報告書のようなもの)に手術の詳しいプロセスや使った薬や補強材などが書かれていました。手術法はTEPでした。これは腹腔鏡手術の一つの手法で、主にTEPとTAPPという方法があるようです。実は数日前までアニメーションでこの手法を説明した動画があったのですが、現時点では消去されています。他に実際の手術の様子を見せる動画もあるのですが、あまりにエグイのでここでのリンクはパスいたします。

ソケイヘルニア日帰り手術をされた方々の他のブログには みなさん手術方法をどうやって選ばれたか、など書かれています。私は腹腔鏡手術は初めてだったので、実はとても興味があり 是非この方法で受けてみたい、という強い希望がありました。ただ今振り返ると、正直なところ腹腔鏡手術をちょっと「なめていた」感があったことを認めます。イメージ的にも傷も小さいことから、かなり楽なのではないかという思い込みがありました。やはり、傷は小さくとも手術だったので、体にいろいろダメージがありました。ただ、良かったのは、当初一か所見つかっていたヘルニアの他に大腿ヘルニアという嵌頓しやすいヘルニアも見つけてもらい、処置していただいたことです。Kirurgen.no(外科医.no)というHPでもTEP法のことが書かれていましたが、なんでも検査時に見つからなかったヘルニアを見つけて治療するには大変有効な手術らしいです。(普通の開腹手術では腹部・鼠径部を全体的に見渡すことができないため)

 

術後の自宅療養

病院からのお達しでは普通の動作は痛みが出ない程度に「どんどん体を動かしてください」と言われていました。ただし、最初の4週間、持つのはマックス5キロまで。と、あとはおなかを使う動作は最初の2週間避けてください、とのことでした。おなかを使う動作とは、自転車や腹筋を使う姿勢、トイレでいきんだりすること…だそうです。

痛みについては 当日を除き、ほとんど鎮痛剤をのまずに済みました。が、やっぱり体を動かすとき、動かした後は痛いです。 傷も時々痛かったりしますが、傷よりもおなか全体に痛いことが多い気がします。前もって言われていた「青あざ」も徐々に出現しました。あと困るのはおなかが腫れていて、服がきついことくらいでしょうか。

寝返りも痛くてうてないので、ずっと同じ姿勢で寝ているためにおこる腰痛。おそらく体がちょっと緊張しながら寝ているせいでおこる肩こりや筋肉痛などもあり、体のあちこちが痛い状態です。日本にいたら、温泉に行ってリラックスできるんですけど…

 

病気休職届 Sykemelding - SM

福祉国家ならではのシステムにSykemelding (シーケメルディング、略してSM)というものがあります。これはケガや病気、うつなどの精神的な状態でも ドクターが「仕事をできる健康状態ではない」と判断すると 書いてもらえます。もちろん、自分のしている仕事との兼ね合いもあるので、より体力を使うお仕事の方などはヘルニア手術の場合、長く出ます。もちろん、人それぞれ術後の経過も違うので、初回出してもらったのが足りない場合は執刀医または病院に言って延長してもらえます。

冒頭にも書いたのですが、フルに復職するのは今の時点ではちょっときついものがあるので、病院に部分的にSMを一週間ほど出してもらおうと思っています。一般的にも国では復職を奨励しているので、もしフルで働くのが不安な場合も、ドクターとパーセンテージを相談して部分復職することができます。 

 

今は多くの病院やクリニックでオンライン化していますが、Lovisenbergはなぜかここだけちょっと古くて、昔ながらの書類でSMをいただいてきました。SMはA,B,C,Dの各パートに分かれていて、それぞれ提出先があります。Aは病院から福祉事務所(NAV)に送ってもらうので関係ないですが、雇用者に出すもの(C)と病気休職手当(sykepenger)の申請書(D)は自分で送らなければいけません。残りのBパートは自分の控えです。ノルウェーらしいわ、と思うのは、雇用主に出す書面には病名は書かれておらず、基本的には病名は個人情報で、職場に知らせる義務はありません。職場にはどのくらいの期間休職するか、また復職後の職場側からのケアの必要性のみを知らせる義務があります。

休職手当ですが、最初の16日間は雇用者の負担期間となり、それを超えると国から支払われます。なので長期休職の場合、申請書のDはNAVに提出するのですが、私の雇い主のオスロ市は国が払う分も立て替えるので、Dも雇用者に出すよう書いてありました。そういった雇い主をお持ちの方は病気休職中も働いている時と同じようにお給料が毎月振り込まれるので大変楽ですね。そうでない場合はこの申請部分がスムーズにいかないと、収入が途切れたりしてしまい、困ったことになります。ちなみに、このお手当は52週間収入の代わりにもらえることが保証されています。(収入が一定でなく、上下したりする方々も審査期間がかかったりすることがあります。)

ただ、気を付けなければいけないのは、一度休職するとパーセントに関わらず SM期間のカウントが始まり、完全復職(friskmelding)後26週間経たないうちに また休職届を使うと、前回カウントの期間内となり、自分が知らないうちに52週間というお手当の期間を使い切ってしまう方もいます。そうなったら、いったん病気休職手当は打ち切りとなり、違うお手当を申請することはできるのですが、仮に支給されてもグンとさがって三分の二ほどになります。

 

医療費

そういえば、かかった費用について書いてませんでした。こちらは「自己負担金1」(egenandel)という自分で払う医療費が今年は2369クローネ(現在のレートで約2万8千円)で、私は11月の時点でこれを払い終えていたことから「無料カード」(frikort)をもらっていました。今回の検査や手術はすべて公のシステムを通したので、手術代は無料だったのですが、資材費として千円ほどの請求が来ました。これは使った絆創膏やガーゼなどだと思います。

ちなみに自己負担金には「2」という種類もあって、1はかかりつけ医、心理療法士、病院で行われる各治療や入院など。2は主に理学療法士が該当します。

 

まとめ

これからもしかしてノルウェーでヘルニア治療などを受けられる方も想定して書いてきました。ノルウェーのシステムについてもかなり触れたのでちょっと長めのブログになりましたが…。

経済的なことを考えると、福祉国家ノルウェーの医療や収入保護のシステムは文句なくいいと思っています。ただ、今回はいのちに関わらないような病気だったので不安はなかったものの、やはりこのシステムにも限界・問題点は本当にたくさんあるなあ、と思うところ多しです。もうちょっと日本のように専門医を自分で選んで、いつでも行けるといいのですが。今のところ、それができるのは富裕層に限られています。