ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステミックカウンセラーのブログです

NAV (ナーヴ)「総合福祉事務所」

みなさまこんばんは。お元気ですか?

今日は第3アドヴェントの日曜日です。ノルウェーアドヴェントでは紫が使われていて、うちでも紫色のろうそくを3つ灯しました。さて、先週はノーベルウィークで主にお隣、スウェーデンで連日催し物がありました。ノルウェーはノーベルの遺言により ノーベル平和賞のみを授与していますが、今年は去年ころまであった コンサートも催されず、ちょっと寂しい感じではあります。

ノーベル平和賞の授与式も終わり、第3アドヴェントとなると、いよいよクリスマスムード一色に突入です。今日のトピックはその中で毎日のようにニュースで話題になっている、NAVのことをちょっと書きたいと思います。NAV... ノルウェーに住んだことがある方は多かれ少なかれ見聞きする場所かもしれません…。

 

NAV =  Ny arbeids- og velferdsforvaltning

www.nav.no

NAVとは…簡単に言ってしまうと、公的福祉手当を出してくれるお役所です。たいてい「総合福祉事務所」と訳しています。NAVの「N」は、実はノルウェーのNではなく、「Ny」(新しい)、という意味の単語です。そうです、NAVはもともと3つあった福祉行政の窓口を一つにしよう、という福祉改革の末誕生した機関です。改革(NAV-Reformen)は2006年ころに始まり、数年かかりました。

もともとあった3つのお役所とは、簡単にいうと(1)年金や児童手当、病気休職手当(前回ブログでも書きましたが)を出していた国家機関のオフィス、(2)国立の職業安定所(ここでは様々な理由で長期で仕事に就いていない方々のサポートや援助対策なども行う)と(3)生活保護の市の窓口です。全く異なったこの3つの組織が市(区)ごとに統合するわけですから、本当に大変なプロセスだったと思います。

ちなみに、国から出る手当と市から出る手当では、種類は圧倒的に国の方が多いのですが、その数と言えば…私もすべて把握できているか、どうか。育児手当(親御さんが新生児の育児休暇中にもらうもの。お母さん、お父さん両方もらえます)から始まって、児童手当、ひとり親の手当、病気休職手当、年金、などなど。実は統合当時、国側は窓口も一つにするだけではなく、担当者も一人ですべてこなせるようなサービスを描いていたのですが…一人の人がこれらすべてのお手当をマスターするのは全くもって不可能です。

 

NAV と私…

はい、実はNAVは私が昔お世話になっていた仕事先です。2007年から2016年末まで、トータルで10年近く働かせていただきました。NAVの中でも、生活保護のセクションで 3つの異なる自治体に勤務しました。

丁度、統合政策が始まってちょっと経った頃。最初のオフィスでも統合の準備が進んでいて、二つ目と三つ目の市では実際に統合のプロセスの中で仕事していました。ちなみに、かなり多くの決定が自治体に任されていました。例えば、最初の市では 隣の市と合同でNAVを立ち上げる選択をしていましたし、二つ目の市ではNAVの中に生活保護セクションだけではなく、児童保護事務所も入れる選択をしていました。

実際の職務ですが、おそらく日本の生活保護セクションと同じように、申請してきた利用者さんと面談、事情を伺って、書類を審査・作成するものです。ノルウェー生活保護の法律では、生活保護とは一時的かつ、最後の手段として与えられるお手当ですので、生活保護セクションで働くには他の公のお手当にも精通していなければなりません。統合前までは、仕事が必要な利用者さんなら、その部分の業務は職業安定所にお任せして済む話だったのですが、統合後は自分たちにもそのタスクが課されてしまいました。例えば、利用者さんに職業訓練に行っていただいたり、NAVで管轄している研修に参加してもらったり。そのために各種異なったコンピュータのプログラムもマスターしなければならないし、また他の機関が普段使っている法律も把握しなければなりません。

特に最後に務めたオフィスはノルウェー国内最大というくらいの大きな事務所でしたので、利用者さんの数といい、こなすタスクといい、本当に毎日嵐のように過ぎていました。

 

ノルウェー中で騒いでいるスキャンダル、とは?

さて、日本とはかなり地理的・政治的な事情も違うのですが、ノルウェーではヨーロッパ経済区域内に関する条約を結んでいるので、公的手当などの決まりについてもヨーロッパ経済区域内の法律に従うことになります。

今回のNAVの失態とは、その法律を間違えて理解していたことから、病気休職手当などを受給されていた利用者さん(で、ヨーロッパ内に滞在していた)がNAVから返済請求が来たり、詐欺罪で起訴されていたという話です。(返済ができずに懲役刑を受けた方もいるとのこと)本来はヨーロッパに滞在しながら受給しても合法なのです。

この話がスキャンダルになっていることの理由の一つは、利用者さんと直接会ったりする担当者の中には、「これって間違っているんじゃないか」と問題定義した職員がいたにもかかわらず、上にいる人たちがまったく相手にしていなかった…ということ。

NAVは区や市のローカルオフィスの他にも様々な専門機関ができていて、いまやマンモス組織になっています。それだけ大きな組織となると、なかなか下で働いている職員の声はやっぱり聴けなくなっちゃうんでしょうね。

実はNAV-Reformen、この改革以降、様々なスキャンダルがありました。まず、利用者さん達からのクレームの殺到。職員たちの疲労困憊が利用者さんに対するサービス低下につながり、様々な失態(受け取った申請書・書類の紛失など)を聞くのも日常茶飯事でした。私も実際に二つのオフィスで引っ越しなどを経験したので、そのカオスぶりはすごいものがあったのです。お国がらなのか、どうかはわかりませんが、なんだかノルウェーの人たちって、「とりあえず、やってみよう」精神は良いのですが、やることが長期的かつ綿密に考えられていない気もします。つまり、改革の時も前もって計算されて計画された、というよりは急にいろいろ上からお達しが来てそれになんとか間に合うようにやっていた印象です。

 

私が勤めていたNAVオフィスを離れ3年が経ちました。今の仕事でもこのオフィスと関わることがあるので、昔の同僚たちの懐かしい顔を見ることができます。「もう、うちには帰ってこないの?」と聞いてくれる同僚もいるのですが…。日本語っぽく言うと、「もうNAVは卒業しました」かな?