ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

高齢の母を日本に残して (後編)

みなさまこんばんは!
4月のイースター連休に続き、5月は17日の憲法記念日(セッテネ・マイと呼ばれています)やイエス・キリストの昇天祭、そしてこの週末の聖霊降臨祭と祝日が多い月でした。こんな連休は私たち夫婦は何をしているかというと、今年は10年に一度の外壁のペンキ塗りです。ノルウェーは木造家屋が主で、一軒家だったりすると外壁のメンテも自分でやらねばなりません。もちろん、業者さんに頼むこともできますが、軽く数百万円だとか…。

うちメンテ、北欧版はまた後日取り上げるとして 今日は前回の続きです。ここ数年認知機能が低下してしまった実家の母のために 介護保険を申請するいきさつと、申請後の半年間をご紹介していました。介護保険認定まではかなりスムーズに行っていたものの、その後数か月開始できなかったサービス。何が起こったのでしょうか…。

 

「サービス必要ありません」ですべてが止まってしまった

2021年夏の一時帰国の時には、主治医や病院での検査の付き添いができ、なんとか母の状況を把握できたつもりでした。その後の母の状況はMessengerビデオ通話の際に本人から聞くのみだったのですが、例えば「主治医の先生のところに行ってきた」という母に「えー、血液検査とかどうだったの?」とか「先生から何だって?」と聞いても、「別に。いつもの通りよ。」の答えばかり。具体的なことは忘れてしまっているので、いつも同じ返事です。こちらからクリニックに直接問い合わせると、かなり驚くことばかり。こちらはますます心配になって、いろいろ具体的な質問(夕飯は何食べた、今日はなにした、など)をしてしまっていたのですが、すると不機嫌になり、「そんなに責めるように色々聞かないで」というリアクションが続きました。一体、どんな生活をして、どうなっているんだろう…。薬は飲めているんだろうか…?と、益々不安がよぎります。(この不安も実際当たっていたのですが)この当時、私はまだ母がどの薬をどれだけ飲んでいるかも全部は把握できていませんでした。

そこで、結局ケアマネさんに訪問看護師さんの導入をお願いし続ける結果となりました。2021年12月ころのケアマネさんとのメールのやり取りを読み返してみると、「年が明けたころにまた地域包括センターのOXさんと相談しながら、ゆっくり進めていきます」のようなリアクションで、イライラはつのるばかり。それは、故に「ご本人(母)からまだ介護サービスは要らないと言われていますので、こちらとしても無理に進めるわけにはいかないのです。」からだとか…。
ちなみに、ケアマネさんは介護保険で賄われている職種なのでケアマネ自体には料金は発生しないのですが、介護保険のサービスの利用がないと、あまり関わることはできないのだそうです。*1

 

診断が出されたタイミングでケアマネにクレーム

このイライラしている時に、最初にケアマネを紹介してもらった地域包括センターにもお願い(ほとんどクレーム)を出したのですが、なんとなくこの二人はもともとのお知り合いだったようで、社会福祉士さんからは何とケアマネをかばうような返事が…。

以前のブログでもお伝えしましたが、実は2021年暮れからお正月に夫と一緒に一時帰国を予定していました。その際、某大学病院にて、母の頭部の検査をすることになっていたのです。私たちが行けなくなったので、母には頑張って病院まで一人で検査に行ってもらいました。(日本にいる兄弟は付き添いはしないので)その後、診断書が出たタイミングで*2ケアマネさんに 「どこがどう止まっているか、見直してください。母には介護サービスが必要なんです」、とかなり強い口調でクレーム。この後、ケアマネさんが家庭訪問してくださり、詳しく母の健康状態(飲んでいる薬や注射を含め)を改めて調査した結果、主治医から「指示書」をやっともらってくれることになりました。ケアマネさんはとても忙しい方で、母の健康状態についても最初からきちんと把握できていなかったのでは…と、今になって疑問が残ります。医療行為にあたる訪問看護は指示書があって初めて契約できるようです。訪問看護は、2022年3月末にやっと導入されました。

 

デイサービス導入へ

さて、夫と私が3月に一時帰国できることになり、この機会に例の大学病院から地元の脳神経クリニックへと転院することになりました。その方が母も通いやすいし、母も私も先の大学病院の高飛車な対応にへきえきしていたからです。こちらのクリニックは数年前に開業したところ。でも、すごい人気のようです。「物忘れ外来」という専門外来が毎週木曜日にあるのですが、こちらの予約は3‐4か月前にしてほしいと言われています。先生もまだ若い40代くらいの方で、とにかく優しく話す先生。この先生にも、主治医にも、「デイサービスは絶対にどこか行ってください」と言われました。

母は以前、デイサービスでボランティアをしていたことがあり、そのイメージから「自分にはまだまだ早い」と、ずっと言っていました。ただ、日中もTVがつけっぱなしで、それを見ているのでもなく、ただのんびり・ぼーっと過ごしていることが多いのです。この、一人でうちでぼーっとすることって、誰の目から見ても明らかに良くないことなんですよね。

ただ、この時もプチ奇跡が起こりました。主治医の待合室で、同じマンションの方に母がお会いし、なにやら「トレーニングに行っている」というお話をされていました。週2回、送り迎え付のトレーニングセンターに行っていらっしゃるというのです。しかも、半日だけ。それが、半日型デイサービスと呼ばれるものだったのは、あとから知ったのですが、母も「私も行きたいわ」と言っているのが聞こえました。私がノルウェーに戻る2日前、最後の主治医への付き添いの際に「デイサービス、絶対始めてください。もう、明日からだっていいんですよ」とかなりガツンと言われ、私がすかさず「そうだ、ご近所さんのデイサービス一緒に行ったら?」と言ったのに「そうだわねー。うちでぼーっとしてても仕方ないしね」と反応してくれたのです。この後すぐにご近所さんのお宅を訪ね、ご家族の方からパンフレットをいただき、早速次の日に電話。なんと、見学に行けることになり、この場で即決したのでした。
こちらのデイサービス、初めの「まだ早すぎる」に反して、母がとても気に入り、半年後には週2で行くようになりました。

 

ヘルパーとお薬ロボット(訪問薬剤師)導入へ

さて、何事もなく約半年が過ぎた昨年秋にまた夫と二人で一時帰国となったのですが、この時は本当にハラハラの連続となりました。もともと兄弟が取り付けた「見守りカメラ」がうちにはあり、人の出入りなどが録画されると、多少の会話も聞くことができます。夏が過ぎたころ、看護師さんが訪問中に誰かに電話している様子が数回確認できました。あとで聞くと、容態の変化などを主治医などに連絡していたとのこと。
一時帰国初日、「どうしちゃったの?」というくらい、うちのあちこちが汚く、洗い物も数日分たまり、しかもコバエも台所にたかっていました。母の様子も以前よりもぐったり、元気がありません。食事も「おいしくないから何も食べたくない」と、私たちと一緒に食べられなくなっていました。(ただし、外食の時は食べていた…)看護師さんがつけているバイタルチェック表を見ると、体重も夏ころから徐々に減っていました。
そして、何と言っても冷蔵庫!ものすごい量の食材が傷んでいました。以前から一時帰国の際には冷蔵庫整理を毎回してきたのですが、今回は尋常ならない量です。本人に聞くと、「食べようと思って」と、冷凍食品を冷凍庫から出したというのです。その他タッパーに入ったシチューの残りとみられるものや、どろどろに腐った野菜など。
先にも書きましたが、動画通話では「元気にしてるよ」と言っていても、やっぱり来てみないとわからないものですね。

この一時帰国では病院の付き添いも複数回あったのですが、頻脈が問題となり、薬の見直しもされました。母がだるそうにしていたのも、もしかすると薬の副作用が強く出ていたせいもあるかもしれません。体重減少に伴って、薬量なども減らされました。消化器系統にも異常があったので、悪いものを食べていると悟った私は、ヘルパーさん導入をお願いしました。冷蔵庫チェックを定期的にお願いするためです。

また、ソファーの下から飲み残しの薬がごっそり出てきた際も、主治医や看護師さんに報告。看護師さんからも、薬の飲み忘れが増えていると伺い、最初は「お薬ポケット」を導入してくださいました。ただ、母がここから薬ぶくろ*3を取り出して自分のポケットにしまったりしているところを目撃したりで、本当にこれで飲めているか疑問が残りました。

私たちがノルウェーに戻ってからもお薬ポケットはしばらく続けていたのですが、朝の薬を二袋飲んでしまったり、飲み忘れが回避できないなどの理由で、ロボットの導入が検討されました。

このタイプのロボット。1週間分の薬しかセットできないので、薬局の方に訪問していただき 毎週補充していただく必要があります。

ケアマネさんが、ロボットをレンタルしている薬局を見つけてくださり、母は訪問費(一回500円ほど)と薬代を自分で払っています。レンタルは無料です。なんでも、母が主治医より処方箋をもらった際に、処方箋が薬局にFaxで送信され、同じ日の午後に薬局さんが一包化された1週間分のお薬を持ってくる…という流れです。ロボットはセットされた時間に「お薬の時間です」と、声を出します。母は自分で取り出しボタンを押して薬を飲むという作業があるのですが、それはクリアーできています。薬の取り出し忘れなども薬局さん・看護師さんが確認してくれています。

 

元気をとりもどした母

さて、この後 私たちもかなり母の様子が心配となり 半年を待たずに前回の一時帰国(2023年2月)となったのですが、またびっくりさせられました。というのも、前回敷きっぱなしだった布団も綺麗にたたまれ、以前のように午前中は忙しく動き回り、食器も溜めずに洗われ…と、かなり元気を取り戻したのです。体重も順調に増加で、元に戻った感じです。あんなに体調が悪かったのに…こんなに元気になるとは!本人は…というと、昨秋のあの状態をすっかり忘れている様子でした。とりあえず、ヘルパーさんが冷蔵庫管理をしてくれているおかげで、悪くなったものを食べずに済んでいると思います。この時の「物忘れ外来」の検査では、なんとスコアも高くなっていました。先生曰く、体の調子が悪いと認知機能にも反映される…とのこと。

日本に行く前にノルウェーのNRKで放映された「Demenskoret」(認知症の方々が参加するコーラスのドキュメンタリー)に感化された私は、歌を歌うデイサービスがないかと探してみました。

tv.nrk.no   (ノルウェー語ですが、「Se trailer」のボタンでトレイラーが見れます。)

丁度、同じ区に一日型デイサービスで音楽療法をアクティビティーとしているところが見つかり、「今のところで十分楽しいのに」と気乗りしない母と一緒に見学させていただきました。実はこのデイサービス、すごい人気だそうで しばらく順番待ちだったのですが、ちょうど明日から始めることとなりました。母は歌声喫茶などがとても好きで、以前よりイベントによく行ってたので おそらくこのデイもすごく楽しんでもらえるかと思ってはいるのですが…。どうなるでしょうか?また後日お伝えできると思います。

前編・後編と2回に渡り、うちの高齢で独居の母の事お話させていただきました。プライバシーに考慮しましたが、具体的に書かないことには伝わらないことも多いので このような内容になりました。実はこの1年の間には、母のお友達やご近所さんとも直接連絡を取らせていただいていて(本人には一応の許可はとってあります)もう、母の健康状態についてはオープンにお話しています。と、いうのもお話しなくても 周りの方には以前と違うというのが伝わっているし、間違った憶測があるよりは正しくお伝えした方が良いと判断したからです。

同じように親御さんが遠くで一人でお住まいの方々の少しでもお役に立ちたいと思い、ブログという形でシェアさせていただきました。親御さんの様子が最近変わって来た…と思われたら、迷わず周りの親しい方、もしくは地域の包括センターなどでご相談されてみると良いかと思います。今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました!

 

*1:実は昔ノルウェーでお世話になった方、Aさんがケアマネさんをしていて、彼女にもご相談させていただいたのですが、この担当のケアマネさんに関しては、Aさんも「そうだけど、何とかできると思うけどねえ」というご意見でした。ちなみに、介護サービス発生後は月一度「モニタリング」と呼ばれる家庭訪問で、サービスがどのように行っているか、調整の必要はないか、などの面談があります。その際、「ケアプラン」と呼ばれる書類も作成されます。

*2:病院によって、かなり対応が異なるのですが 診断がどうだったか電話で問い合わせても、全く拉致があかず…。個人情報だから…だということですが。もちろん、母に直接聞いても診断書をもらったかどうかも覚えておらず、病院とクリニックに数回電話することとなりました。ちなみに、もう一つ母が良く通っている病院には「個人情報提供同意書」というのを自分で作成して提出してあります。

*3:「一包化」してあるもの。日付、いつ飲む薬などが書いてあり、同じ時間に飲む薬が一つの袋に入れられている。これは主治医からの指示で、無料で薬局が行います。