ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

額関節症(TMD) ノルウェー事情アップデート(2022 年上半期)

みなさまお久しぶりです。お変わりありませんか?私はといえば、夏(暑さや日差し)はもともと得意ではないのですが、ここ数年更年期障害も重なって、さらに疲れやすく ちょっとバテ気味なこの頃です。

さて、今日のトピックは前回からもう半年以上アップデートしていなかった顎関節症の治療について、今年上半期ということでまとめてみました。様々なことがありましたね…。結論から言うと、まだオープンバイトは以前のまま。改善はされていません。悪くなっていないだけ良いかもね、と自分に言い聞かせているのですが。どんなふうに参考になるか わかりませんが、何かのお役に立てればと思い、シェアいたしまーす。

 

私の顎関節症・治療ブログ ~前回までは~

顎関節症一般についてはググっていただいた方がより正確な内容を見ていただけるので、あえてこちらでは説明を省かせていただきます。さまざまな種類がある中で、顎関節の骨の部分が変形してしまうものを「顎変形症」というのですが、私のケースはその中でもレアな「突発性下顎頭吸収」らしい…、というのがこれまで判明しました。「らしい」の理由は、結果的に前歯部開咬(オープンバイト)が現れているのでこの診断しかない…という各先生方の見解ですが、すべての症状があるわけではないのです。なので、これに賛成しない先生方もおられました。下顎頭吸収と開咬の関連ですが、下あごの先端が吸収してしまうことで、下あごが短くなり、後方にずれてしまうことで前歯などがかみ合わなくなります。

発症はおそらく2020年の今ころ。初めの自覚症状は、顎がつっかえるようになった感覚があり、話がスムーズにできない、はっきり話せない…など。と、同時に奥歯が妙にがっちん・がっちんと当たるようになったのです。ただ、この時はまさか下あごが動いてしまって開咬になっていることまで 全く思いもつかず。歯並びも、毎日何気に見ているだけでは少しの変化に気が付かないと思います。

顎の骨関係は、日本だったらすぐに口腔外科のある病院などに行けるのですが、こちらは病院は国立で医師からの紹介状がないといけない場所です。(プライベートのクリニックは行けますが、通常は歯科医の紹介状が必要だし高い。)まずはMRIを取って、少し疑わしい点があり、紹介状をもらい、オスロの大学病院に行ったのが同じ年の10月。ここではあっさり「うちでは外科的治療以外はしていないので、矯正歯科を自分で探していってくれるかな」と言われ、帰されてしまいました。ここから自分の患者としての権利を試すべく、オンブズマンさんにお世話になったり、歯科医と相談の上、専門歯科医(補綴系と矯正系)やオスロ大学歯学部専門クリニックで診ていただいていました。自分でも日本の治療論文などを探してみたりして、3・4か所の大学病院で外科以外の治療法が試されていることが分かりました。

去年夏、コロナ禍で初めて里帰りをした際、治療論文でも見たある大学病院でスプリントによる牽引治療を試させてくださることになりました。また、違う大学病院の先生よりイスラエルの治療論文を紹介していただき、英語ですが何とか手に入れ、読むことができました。去年の11月にはヨーロッパの口腔外科医の団体を通して、論文執筆の先生とメールでコンタクトが取れ(でも、案の定返事来ず)、希望の光があちこちに差しているような、すごくハッピーな気分で終わったのが、前回のアップデート*1

 

今現在の症状

あまり普段詳しく書かないのですが、今回はちょっと主症状について書いてみます。まず、2年前にあったような初期症状は今はなく、顎の位置に合わせて筋肉も変化してきたような感じで、話すことは以前より楽になりました。が、調子はアップ・ダウンもあるので、顎の調子が悪い日は顎を動かすのもおっくうです。それから、「サ行」は発音できない時があります。以前頻繁にあった、咀嚼筋の筋肉痛ですが、なぜかスプリント治療で顎を固定して寝るようになってから少し改善されました。でも、痛い時もあり、「あ・い・う・べ」体操*2などでなるべく関節を動かし、筋肉をストレッチするように心がけています。

もう一つの大きな課題が咀嚼。なにせ、奥歯の2,3本しかかみ合っていないので、麺類や薄いもの、細いものは嚙み切れないし、少しずつ口に入れて少しずつ食べないとしんどいです。一番楽なのが厚さがあるもの…。パン類は食べやすいです。ただ、人間って適応性が備えられているもんですね。あれほど、悲しかった開咬も だんだん慣れてきています。もちろん、とても不便ですが、開咬だって人生を楽しく過ごせる、と考えると 少しメンタルで軽減される気がします。

 

スプリント治療…効果のほどは?

今年は3月下旬に里帰りしたのですが、例の大学病院で再診。まったく顎位置が変化していなかったのですが、もともとどちらかというと「試してみる」治療だったので、この時は上あごのスプリントにピヴォットという小さな突起(というかプラスチックの盛り)を付けていただきました。ピヴォットがある方が関節が動きやすいとか。先生に、これまでこの病院でこの治療をされた方々(約10名ほど)のうち、どのくらいの確率で改善されたのかと、もし効果ゼロの場合、考えられる治療は何かというのを伺いました。答えは、ほとんどの方々に改善が見られたそう。でも、ケースバイケースがあるので、私の場合はこれが無効果だった場合は矯正に入るのが良いのでは…とのこと。とりあえず、最低1年くらいはこの方法を続けてみても良いのではとのご意見でした。

 

オスロ大学歯学部・補綴科専門クリニック

私が行っていたのは補綴科だったのですが、初回の説明では矯正科に回していただくことも可能とか。でもこれは違っていました。担当の先生(専門歯科医コースに通う一般歯科医の先生)は「絶対原因を突きとめますからね」と、ずいぶん意気込んでくれていたのですが、結局はっきりした診断はここでもされず。「おそらく」下顎頭吸収…とのこと。まあ、はじめっから分かっていたんですけどね。最終回では、作ってくださった自分の歯型模型で、補綴系(かぶせものや削る)治療ではどう開咬を改善させられるかを見せていただいたのですが、先生曰く「あごの角度はだいたいで、正確には測れていないのよね」とのこと。うーん、顎の角度が変化した故の開咬なのに、なんだかアバウト。模型ではかなり上下の奥歯があちこち削られていました。でも、削るっていってもクラウンもあるので、場合によってはクラウンのつくり直しが必要になったりと、かなり費用がかかるかもしれない、とのこと。(またしても、アバウトなのが、削る想定の歯の神経の位置関係などは全く見ていない。)まあ、あくまで「これが治療の一例ですよ」的なものと理解しました。まだ請求書は届いていないものの、歯学部といっても歯科関係は全額負担なので、ウン万円はくだらないでしょうね…。あまり意味のない感じでしたが、でもやるべきことは やってみた…感あり。

 

オスロ大学病院・口腔外科の部長と対決

さて、大学病院は以前からお伝えしているように国の管理下にあり、独自の法律で患者の権利などが(一応)保護されています。詳しくお伝えするスペースがないので省略ですが、私が理解するところ、患者の私が病院の判定である「外科的治療は行っていないので、あなたを治療することはできません」に不服である場合は、クレームする権利、そしてクレームは通常判定を下した機関の病院に出すもので、病院が初めの判定を変更しないと決定した場合は、速やかに上訴機関のStasforvalter(スターツフォルバルテル)にクレームを送る義務があります。去年、実は病院がなかなかクレームを転送していないのにヤキモキして、直接Statsforvalterにクレームを送り、病院が義務を遂行しない旨もクレームしました。12月頃、私にStatsforvalterより、病院あての勧告状のコピーが届きました。つまり、義務を果たしていない病院に対するお叱りの手紙です。

2月、以前から骨の吸収が進行性なものかどうかを調べてもらうべく、同じ口腔外科に出向いた際、このクレームについての話になりました。外来担当医は「しぶしぶ」といった感じで、「じゃあ、部長と面談の予約とってあげますよ」と、この5月に予約を入れてもらったのでした。親切…というよりは完璧に責任逃れな感じですね。

さて、行ってみると再診の診察だと思い込んでいた部長と対決…。と、いうのも、私が望んでいる非外科的治療(例えば、日本やイスラエル)は、口腔外科からすると完璧に矯正歯科医の領域だという理解が私にはどうも腑に落ちないから。その旨もはっきり伝えました。矯正歯科医は通常、歯を動かす専門だけれども、顎関節の知識はやはり口腔外科医にはかなわないのではないか。ましてや私のように骨の吸収が起こっている患者にとっては、顎関節の知識が浅い医師にはかかれない…と、いうのが私の主張。現に矯正治療がきっかけで開咬になる患者さんも、かなり居る。だから、矯正歯科に回そうとする病院の意見は全く反対である…と。部長さん、この意見は一理ある…と、かなり我慢強く聞いてくれていたのですが、かなり横柄な態度の方でした。そして、例のイスラエルからの論文も「こんな治療を希望しています」の例で見せてみました。初めのリアクションは、「ああ、こんな治療法はどこの矯正歯科でもやってるよ」そして、「これ、どこの学術誌?信用できるのかなあ」。でも、私が何が矯正歯科治療と違うのか(ど素人ながらも、読み込んだ論文ですから。この何ページのこの患者さんは私の症例に似ている…と伝えたわけです。)できる限りお伝えしたところ、同じ症例の患者さんの治療データをもっと持ってきたら 海外治療を承認してもらう可能性*3があるかもしれない、と言い出しました。この日の面談では、これが結論となりました。ただ、例のクレームは私は取り下げないので、病院側の義務を説明し、速やかに転送してくれるようリマインドしました。部長さんは外科医なので、全くこの手の事務的知識はない模様…。(ある・ある、ですかねえー。)

 

イスラエルの先生

治療データかあ。たぶん、私みたいな一患者が頼んでもダメだろうな…。この論文の先生は11月以来お返事がないので、ちょっと気が引けたのですが、とりあえず事情を説明して、メール送信。でも、もし海外の患者を診てくれて、治療費を提示してくださるなら、国の援助云々は関係なく診ていただきたいです…とも、アピール。イスラエル…ニュースで見る以外はどんなカルチャーでどんなシステムだか全く見当もつかないのですが。とりあえず、先生がお勤めの病院のHPをチェックすると、かなり英語で書かれた部分が多いので もしかして海外から患者さんを受け入れているのかも…と、また希望が湧いできました。

 

まとめ

今日は長くなってしまったのですが、この半年間で起こった顎関節関係の体験を綴ってみました。病気って、本当に思いがけない時、思いがけない形で表れるものだなあ、とつくづく思います。今回はたまたま顎関節で、命に関わらない病ですが、本当にいつ何があるかわからないですよね。

私も正直、これからこの顎・かみ合わせがどうなるかわかりません。歯を抜いたり、削ってしまえば、時間は短くて済むのでしょうが それもまだやりたいとは思えません。いろいろやってみることで また先も見えてくることでしょう。

長いブログ、最後までお読みくださり、ありがとうございました。みなさまもお体に気を付けて。

マイ・ユニ

 

 

*1:前回少しご紹介した、Nye metoder、という新しい治療法を提案するのも、やりましたがやはり却下されました

*2:

www.minato.coop

*3:必要な治療がノルウェーの病院で受けられない際、海外の医療機関での治療費などを援助してもらえる制度があります…。が、どの治療でも良いというわけでもなく、承認されるにはこの部長さんが言うようにデータが必要です。