ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

友人Tちゃんを偲んで…

皆さまお元気でしょうか?2月も末になりました。日本が今とんでもないことになっていますね。こちらは遠く離れているものの、うちの母(もし感染したら、思いっきり重症患者になってしまうカテゴリーです。)や家族・友人など、私にとっては他人事ではありません。

ここ1,2週間 「具合が悪い時は仕事を休みましょう」というメッセージとともに、いかにほとんどの方が 無理を押して仕事をしているか、ということも話題になっています。

今日のトピックは実はウィルスではなく、今月初めに亡くなってしまった 同い年の友人Tちゃんです。彼女のご家族から訃報を聞いたのが先週でした。ご家族によると、彼女は年末から体調を崩し、1月中はずっと体調が悪いまま 2月に入り亡くなられたとのこと。詳しい病名などは伺っていませんが、Tちゃんは典型的な頑張り屋の日本人…具合が悪くても仕事に行くタイプでした。

 

いつも居ることが当たり前だと思っていた私

訃報をいただいたとき、かなりショックで体が震えました。そして、思ったことが、なんで里帰りの時に会っておかなかったのか、ということ。とても悔やまれることですが、個人的に声を掛けてもいませんでした。と、いうのも去年の3月の帰国時に会っていて、その前、その前の帰国時にも会っていたので なんとなく「次回でもいいかな」と、考えてしまっていたのです。もちろん、今回はうちのもろもろの件が優先だったこともあり、(彼女と会うために)都心に出かけるのもちょっとしんどいと感じていたこともあります。でも、毎回会っていたから…ということが 彼女がいつも居るという感覚になっていたのでしょう。

いずれにしても、もし連絡だけでも取っていたら、彼女が入院していたにしても なんらかの励ましの言葉もかけられたでしょう。そんなことも全然知らなかった自分に とっても腹が立ち、がっかりします。

 

Tちゃんほど サービス・マインドな人は会ったことがない

彼女、Tちゃんと知り合ったのは今から30年くらい前、都内にある専門学校に通っている時でした。彼女とはクラスも近かったのですが、入っていたESS(English Speaking Society) を通して親しくなっていきました。彼女はお料理が得意で 人を喜ばすことが大好きな人でした。学校の系列は違ったけど、自分のレストランを出したいと 若いころは夢を語っていました。卒業後、彼女はレストラン系のお仕事をしていて、その後福祉業界に転向。私がノルウェーに来てからは 日本で会うときのみ お互いの近況を伝えあっていたのですが、フェイスブックに参加してからは 彼女のお仕事の様子や 趣味のお料理・お菓子教室の話題、熱を入れていたアーティストなど、かなり頻繁に近況を見ることができていました。

Tちゃんの福祉業界のお仕事はシフト制で、夜勤もかなりあったようです。と、いうのも「夜勤明けで…」という書き込みをよく目にしていたため。転職も数回していたようで、彼女曰く、就労条件が良くないところが多いので 良い条件のところに転職するのは普通とのことでした。それにしても、よく私がFBをチェックする時間、日本時間の午前3時・4時に彼女からフィードバックが返ってきたりしていたので 「いつ寝てるの?」と思ったものでした。

最後に彼女と会った去年の3月も 彼女はかなり調子を崩していましたが、1時間かけてわざわざ都心に出てきてくれ、しかも自分で焼いたケーキも持ってきてくれたのです。その後、FBを見るといただいたケーキの写真があり、なんと ほとんど徹夜で焼いていたとのことでした。

 

今回のウィルスの件とTちゃんのつながり…

ウィルスの拡散とともに、「熱があったり、具合が悪い人は会社や学校を休んでください」という厚労省ガイドラインが伝えられました。一方、FBの書き込みで熱があっても、体調が悪くても「休めないから」と仕事に出ていたTちゃん。私のみならず、他のFB友達にも「休んできちんと直さなきゃダメ」と書き込みされていたのですが。やはり、彼女の職場の環境が人不足などで出勤を余儀なくされていたのでしょう。そして、彼女の他人を思いやる性格も大きな理由だったに違いありません。

このガイドラインが出された時、やはりTちゃんのことを思わずにはいられませんでした。「ああ、こんなガイドラインがもっともっと前から出されていたら」Tちゃんはもしや命を落とすことはなかったのでは…?と。もちろん、ガイドラインだけではなく、政府がもっとプッシュして本当に具合が悪い時に無理せず休める職場環境も整わなくてはいけませんが。そして、コロナウィルスに限らず、本来はどんな感染症でもこのガイドラインがスタンダードになる必要があるのではと思います。

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50歳の手前で亡くなったTちゃん。あまりにも早い死です。

いろんな事を彼女の死から教えてもらった気がしています。まず、明日は本当に誰にも分らないということ。今日会える人がいたら、今日のうちに会っておく…または連絡を取る。いつもその人が居ると思ったら大間違いだということ。

それから、普段の体調の管理と、自分の体は自分しか守れないんだということ。もちろん、ノルウェーでは熱があって仕事に出なければならない、ということはありませんが、同じ福祉業界に従事する者として ユーザーさんや患者さんのことを考えて無理をしてしまう兆候があるのは否定できません。

 

もうTちゃんと日本に帰っても会えない、ということがまだ信じられません。残されたご家族にお悔やみを申し上げるとともに、Tちゃんのご冥福をお祈りします。ゆっくり休んでね、そして今までどうもありがとう、Tちゃん。