ハンブルネスのひとりごと

ノルウェー在住のシステムズ・カウンセラーのブログです

私の本業、Ungbo (うんぐぼー)

今週末も日本の一部の地域で大雨と災害がありました。被災された方々、心からお見舞い申し上げます…。

 

さて、そういえば 私の本業については触れたことがなかったわ、とふと気が付きました。私の職場はオスロ市のなかの専門機関の一つ、Velferdsetaten(英語訳 Oslo Municipality Welfare Administration)の中にある、Ungboという部署です。単語のWelfare、は日本語では福祉と訳されていますが、日本語で福祉をイメージされると ここで使われている「福祉」とはちょっと内容が違うように思います。日本からいらっしゃる方に老人福祉とか障がい者福祉のことも聞かれますが、ちょっと分野外かな、という感じです。ノルウェーでは老人福祉はどちらかというとHelthcareの分野の中に位置付けされることが多く、職員も看護師さんが多い状況です。障がい者福祉もどちらかというとHelthcareなのかな。ただ、看護師さんの他にソーシャル・ワーカーの一つのVernepleier(ヴァーネプライエル)がいるかな、と思います。彼らは薬剤などを取り扱え、様々な障害に精通するソーシャル・ワーカーなのです。

実際のVelferdsetatenは薬物常習者の方の施設運営や社会復帰事業が一番大きなセクショとなっています。一方、私の所属するUngboは予防福祉のセクション下にあります。

 

40年以上続くUngbo

Ungboという名前は造語でUng(若い)とBo(住む)からなっています。どうも、デンマーク発祥のコンセプトらしいのですが、簡単に言うと「わけあり」ユース、17歳ー23歳のUngbo住宅(市営住宅)に住む子たちのフォローアップの仕事です。もう40年以上も続いていて、昔はそれこそ住居のないヒッピーなども住人になっていたようですが、その時代とともにクライアントさん方も変わってきています。予防福祉というと一番なおざりにされてしまう傾向があり、ここも数回閉鎖の危機を乗り越えてきました。

Ungboではオスロ市営住宅の一部を管理・運営しており、いろいろな事情で実家に住めなくなった子たちが住居申請してきます。Ungbo住居に住むと、ベーシック・フォローアップといって、担当者が与えられます。ただ、ベーシックは定期的に担当者と会うわけではないので、もっとフォローアップが必要な子たちは区を通して「強化フォローアップ」を申請します。こちらは担当者に週一で家庭訪問・面談してもらえるというものです。

どんな子たちが申請してくるかというと、よく聞くのが移民・難民などの2世の子たち。実家には下の兄弟がたくさんいるので、親に「出ていけ」と言われたり、ジェネレーションギャップなどで親とケンカが絶えないなどの事情があります。

そのかたわら、児童保護事務所を通して申請してくる子たち、虐待の経験などで今もトラウマなどで苦しんでいる子たちも居ます。

 

一緒に洗面所の排水溝を開けたり…お掃除も?そしてカウンセリング

実は私がUngboに来たのは昨年の7月。ここではスペース上省略しますが、元居た職場が閉鎖になり、空きがあったため、市職員の権利を使ってこちらに配属させてもらったのです。ただ、すごくラッキー(?)だったのは、Ungboはもともと働いてみたい部署の一つで、実際に2015年には仕事申し込んでいました。(この時は仕事はもらえず、だったのですが、去年聞いたのは実はこの時ナンバー2として候補にあがっていたらしいのです。なんでもっと早く言ってくれないの?…ですかね。わかってたらその後も申請したんですけど…。)

この短い間に担当させてもらっている、Aちゃん。彼女のご両親は北アフリカからの難民です。Aちゃんはノルウェーで生まれたのですが、親御さんの国とノルウェーの文化的ギャップが大きく、薬物にも手を出し、区の児童保護事務所を通してUngboに来ました。彼女の場合はご両親との不和について相談にのるほか、洗面台が詰まった時には一緒に排水溝を開ける作業をしたり(彼女が自分で次の機会に対処できるように)お掃除を一緒にしたり、といろいろな仕事内容を体験させてもらっています。

そう、Ungboのお仕事は居住に関わる知識全般が必要だし、「汚いから触れない」とも言っていられません。ベッド・バグ問題も時々あったり…ちょっと「なんでもや」っぽい部分あり。

Aちゃんは今高校で職業技能を習得するコースに行っています。彼女は元気な時はとっても楽しくいい子で、私のはいていた5本指ソックスが欲しいなど、はっきり言ってくれる子です。少しずつ、状況は良くなってきているので、素敵な未来が来るよう、これからもお役に立てたらうれしいですねー。

 

なぜか(それとも必然的?)移民の私には移民バックグラウンドのクライアントの子が多いのですが、最近担当になったのは東欧出身の女の子たち。この子たち、日本人によく似てて本当に真面目なおりこうさんなんです。礼儀ただしいし、ドタキャンもなし。でも、その裏ではいろいろな辛いことを経験していて、なかなかオープンになるには時間がかかります。まだ、何が大変なのか、家族との関係など、の話は彼女たちの準備ができてから話せるのかな、という感じです。

 

 

さて、今回は私の現在の職場とどんな仕事をしているのか、をちょっと紹介させていただきました。守秘義務もあり、あまり詳しくは書けなかったのですが、今所属させてもらっているチームでは私が取った家族療法(システミック・アプローチ)を積極的に取り入れたり、チーム内もその専門知識がある同僚がほとんどなど、でこれまでと違い かなり自分の興味・専門分野とマッチした感じでとっても恵まれていると思います。(ここまで来るのに、長ーい・長ーい道のりでした…)

この秋、以前ご紹介したナラティブ・アプローチをスキルアップさせるべく、ワークショップに通っています。こんな講座に通えて、ほかの参加者と意見交換したり、練習する中での気づきがあったりする時、楽しいなー、感謝だな、と思います。もっともっとナラティヴでいろんな子たちと会話できたら…というのが、近い将来の夢・希望です。

このワークショップや主催者のRobustさん(Kirkensbymisjonという団体です)のことについてもいずれ書きたいと思っています。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。